けれど今では。
「お母さん。いま帰ったよ。工合悪くなかったの。」ジョバンニは靴をぬぎながら云ひました。「あゝジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」
ジョバンニの母は病に伏せっている。食事時も起きてこられないのだ。父はまだ北の海から帰らない。父が大きなカニの甲羅やトナカイの角を学校に寄贈しラッコの毛皮の上着を土産に帰ってくると約束したそのころは、カムパネルラとだってアルコールで走る汽車模型で遊んだりした。いまは…ラッコの上着のことを冷やかされ、カムパネルラの家にはしんとした朝のうちに新聞を配達に行くだけ。ついて来てくれるのは犬だけ。
「さうだ。今晩は銀河のお祭だねぇ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
「あゝ行っておいで。川へははひらないでね。」
- 制作日
- 2001-10-28
- 画材
- 鉛筆、PainterClassic1.0、Photoshop6.0
book data
- 作者 / アーティスト
- 宮澤賢治
- 題名 / 収録物
- 「宮澤賢治全集 7」 ちくま文庫 (amazon.co.jpで ISBN:448002008Xを見る)
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