春の空から落ちてきた子ども。

ゴスロリ服のシオンちゃん(画像)

珍しくスモッグの晴れた昼下がり、眼鏡くんは近郊の丘陵に薬草を渉猟しに行った。そして帰ってきたとき、10歳と少しばかりと見える子どもを連れていた。それは大騒ぎになる。あんずちゃん以外に女がいたのかとかいくつのときの子だとかツッコミまくるご近所さんたちを、いつもにも増してぼんやりした顔で見回して、彼はひとこと「…落ちてきた」とだけ言った。この惑星全体が突発的かつ小規模な流星群に見舞われた日のことだった。

それ以上のことはあんずがいくらまなじりを決して問いただしても要領を得ないのだ。空から「何か」が落ちてきて、中にあった「何か」がどうかして、そしたらこの子がいたのだと。なんでそんな怪しいもの連れて帰ったのよと訊けば、「何となくそうしなきゃいけないような気がして」と、本人も訳がわからない様子。ハルジョオンの野原で出会ったから、とりあえず「紫苑」と呼ぶことになった。この紫苑が無類に可愛らしい。見た目がどうというよりも、保護欲を激しくかきたてるのだ。年の頃は10歳と少しばかり、髪と目は鴉の濡れ羽色、大きな瞳がいつも物問いたげにうるんでいる。そして性別が―ない。性徴が、存在しない。不審に思いながらも、口もきけなかったその子が片言で話しはじめ、ご近所さんたちの名前をひととおり覚えてしまうころには、あんずのあつらえたゴシックロリータ風のファッションに身を包んで下町を歩く姿は日常のものとなっていた。

やがて世界各地で異常な生物による異常な事件が相次いだり、“空を飛ぶ謎の男”が異常生物がらみの事件の現場で目撃されたり、あの流星群は地球外生物の侵攻だったのではないかと騒ぎになったり、眼鏡くんの隠し事がますます増えたりと、いろいろあるのだけれどもこれ以上はネタバレすぎちうかもう書くしかないのか。

イラストは、眼鏡くんにくっついて離れようとしないので仕方なくデートにまで連れて行かれたものの、とりあえず初めて見たこの「さんどいっち」とやらはどうするものなのかと考え込んでる紫苑ちゃん。…邪魔にならないからってあんまり目を離さないほうがいいと思うよ。

制作日
2002-11-04
画材
Gペン、Painter7.0

character data

名前
紫苑 / Shion
シリーズ
Flower Garden
参考
親代わりの眼鏡くん

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