ホントはレイブンじゃないんだけど。

帽子とコートと鞄を手放せないレイブンくん(画像)

レイブンは折紙士だ。骨董品に折り紙(鑑定書)を付けるのが仕事。腕利きの骨董鑑定人としてほんのちょっぴり名高いが、本当の名はノリフミくんだということは、今は行方も判らぬ両親しか知らないのではなかろうか。レイブンはあえて訂正しない。人と関わるのが怖いから。知られたくないことを知られてしまう、その恐ろしさを知っているから。

レイブンは書画骨董に疎い。価値も相場もわからない。彼が鑑定するのは、作者は誰なのか、どんな人の手を渡り歩き何を経験してきたのか、それだけだ。彼の手がモノに触れる、するとモノは自らの来歴を物語る。その物語を紙にしたためる、それだけが彼に出来ること。人は彼を「魔法の手を持つ」と賞賛するが、その手が触れた人の心すら読み取ると知ったらどうだろう。あのときの両親のように―? ならば二度と誰にも触れない。誰にも触れさせない。鍔広の帽子とマフラーで顔を隠し、手袋と長すぎるコートの袖で手を覆って、黙ってうつむいて生きてきた。

そのレイブンを変えたのは、物怖じしない恋する少女だった。彼女はレイブンの手を取りこう言った。「わたしけっこう性格悪いの。だから私の気持ちを知っても嫌いにならないでね。でも自惚れないで、私が世界でいちばん嫌われたくないのはレイブンじゃないから。だから大丈夫」。世の中そんな豪傑ばかりではないけれど、とりあえずレイブンは手袋を指なしのに替え、折紙屋鴉庵の看板を掲げて旅に出ることにした。これがホントのレイヴン(raven=ワタリガラス)だね、と冗談を言う余裕も最近はあるらしい。

※「折り紙」とは:刀剣や書画など骨董品の鑑定書。刀剣の場合だと、銘があればその真贋、外見の特徴を書き記し、鑑定者は花押(サイン)を付すそうな。極書(きわめがき)とも。目録や手紙を書き付けるための、奉書紙などを二つ折りにした紙のことも「折り紙」という。

制作日
2002-01-27
画材
Gペン、Photoshop6.0

Other Version

  1. pbbs/20020307raven.jpg春嵐の夜鴉 / いつも着ているコートと帽子は防水機能も万全なのだった(2002-03-07)

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名前
礼文 / Raven
シリーズ
Bloody Hounds-next 「折紙の砦」
参考
物怖じしない恋する少女、ハルちゃん

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