超私事不定期日記(仮) 2003年3月増補
2003年3月29日(土曜日)
能登国一宮
そうだ、金沢行こう! と思い立ったのは前日のことであった。PC のないところに行って仕事を完全に忘れたかった。
とにかく列車のダイヤだけ調べて出発する。往路はサンダーバード。朝、出勤とほぼ同じ時刻に家を出て、昼前には金沢に着く。金沢駅の観光案内所で路線バスの時刻を調べ、なぜか能登国一宮・気多大社へ。…え。なんで加賀一宮・白山ヒメ神社に行かぬのかと。いいのだ、今回の旅の表テーマは「辺鄙な一宮でご朱印をもらう」、裏テーマは「あわよくば土筆摘み」なのである。加賀一宮にはまた行く機会もあるだろう。
JR七尾線は能登半島を先端へと進む。寒気の厳しさを物語る、乗客がプッシュボタンで開閉して乗降するドアも、大阪から来た身にはもの珍しい。羽咋駅で降りてバス停へ。あてにしていた便は往路復路ともに春休みのため運休であった。仕方なくタクシーで大社へ向かう。沿道に林立する、宮司を何やら糾弾する看板が気になる。うーん、なんだかありがたくないヨカーン。
社殿や狛犬は歴史を感じさせるいい風情。神門の下で拝観料を納めようとしてやや固まった。う、受付係の巫女さん…化粧濃い! サーファー系茶髪! 気を取り直して拝観料と引き換えにご由緒書きを拝受。…おファンシーな巻物ふうデザイン。気を取り直しまくって拝殿へ。左手に何やら縁結びをテーマにしたらしきプリチーな飾り付けの社殿が見える。肩がかかとまでがっくり落ちた気分でご朱印を頂きに行く。たまたま宮司さんがが社務所にいらしたので直接依頼する。が、筆は筆ペン、墨はインク入れに入っている。ううう。あんましうれしくない。
しょぼくれつつ境内で弁当(鱒の鮨)を使って帰ろうとしたら、柴田理恵が来た。トラベルミステリのドラマの撮影、とのことであった。
2003年3月30日(日曜日)
加賀国名園
いちおう“金沢旅行”の面目も立たせるべく、兼六園に行っておく。桜には早く、梅は散りかけの絶妙な季節。恐らく1週間後ははるかに混雑するだろう。
換羽期の雷鳥のごとき柄の鳩がいた。美少女二人連れに抱かれて極美お座敷犬が散歩していた。おじいちゃんが梅林に夢中になって苔園に踏み込み、孫に叱られていた。写真のシャッターを4件頼まれたが、すべてデジカメだった。
兼六園、以上(ぉ
雄山 神社岩峅寺 前立社壇
さて次は旧越中国一宮の雄山神社。この神社は、立山連峰の雄山山頂に鎮座する峰本社と、山麓の2箇所の社殿からなる。標高3003メートルに鎮座する本社にはとても参拝できないが、山麓の社殿には電車で行ける。2両編成のかわうい地鉄電車で岩峅寺駅下車、少し歩くと岩峅寺前立社壇。杉木立の間の参道をかっきり90度折れて拝殿、本殿に参ることになる。峰本社を遥拝する形式かと思いきや、方角的にはそうでもないようだ。拝殿の中に古びた石の狛犬がいた。てっぺんが平らな頭のつむじ×2がかわいらしい。
社務所では巫女さんと神官が PC を前に事務に勤しんでいた。それでも、ご朱印をお願いすると、きちんと墨を摺って書いてくれる。神紋の“鷹の羽のぶっちがい”の印もかっこいい。
さて次の目的地に向かう電車にはまだ間がある。というかわざわざ待ち時間ができるように仕組んだとも言う。だってすぐ前を常願寺川が流れているのだもの。かねて用意のビニール袋を片手に、土筆を求めて土手を逍遥する。小一時間で小鉢2杯分とおぼしい量が集まった。うれしい。
雄山神社芦峅寺中宮祈願殿
再び地鉄電車に乗り千垣駅で下車。このあたりまで来ると雪もかなり残っている。兼六園ではもう取り除かれていた雪吊りが、個人の御宅の庭木に施されている。芦峅寺中宮祈願殿は、年古りた杉の巨木に鬱蒼と覆われ、雪に埋もれていた。明るくしんとして、時折響くのは鳥の声ばかり。人ひとり通れるほどの幅に雪をかいてある、それが参道だ。寒気よけのためか、社殿は戸を閉ざし防風シートで囲まれている。「ご自由に入ってお参りください」と張り紙があり、家族連れの靴が脱いである。社殿に上がりこむなど初めての経験だ。
とりあえずお参りして、背中に子供を乗せたユーモラスな木製狛犬などカメラに収めてみたが、どうやら神社関係者は誰もいない様子。これでは御朱印をもらえない。未練たらしくいつもは人が坐っているらしい机のあたりなど眺めていると、「御朱印希望の方は社務所までお越しください」と書き置きが。未練たらしくしてみてよかったことだ。
社務所兼宮司宅は、立山博物館の横を過ぎて少し行ったあたり。訪いを入れると、丸顔でにこにこした宮司さんが現れた。奥様もにこにこしていた。子供たちはきゃあきゃあしていた。仕上げてくださった文字は、下の画像(左)のごとく雄渾なもの。ああどちらも御朱印の「山」の字が素敵だ。満足である。
帰途もサンダーバードに乗れた。駅弁を使ってひと眠りしたら、たちまち大阪に着いた。あまりの楽さに、なぁんだちっとも遠くないや、とか思ってしまった。一宮巡りにハマるのは少々危険かもしれない…。
え。これを金沢旅行と呼ぶのはアレですか。
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