恐るべき“新人”。

フン先生とと怪盗ブン(画像)

「ブンとは何者か。ブンとは時間をこえ、空間をこえ、神出鬼没、やること奇抜、なすこと抜群、なにひとつ不可能はなく…」 フン先生が書いた小説の主人公、四次元の大泥棒ブンが小説から飛び出した! たちまち全世界に、奇怪なしかしユーモラスな事件が……。あらゆる権威や常識に挑戦する奔放な空想奇想が生む痛烈な諷刺と哄笑の渦。現代戯作の旗手、井上ひさしの処女作。(新潮文庫カバーより)

なぜか家の本棚にあったのだ。中学生のときに初めて読み、あんまり面白かったので独立するときに自分用を購入した。そういう経緯で手元にある本が数冊あるが、いずれも今なお愛読している。

とにかくおかしいのである。まず小説家の大友憤先生がおかしい。赤貧洗うが如く、もらい物のチラシの裏を原稿用紙とし、インスタントラーメンと味噌汁ごはんを常食するビンボフルライフの中で、矜持と批判精神はなくさないのがエライ。出てくる人々みんなおかしい。科学捜査の助けにするため人間の毛の総本数を数えようとしたクサキサンスケ警察長官、なぜか「でしゅね」言葉のイワン・イワンコッチャナイゼヴィッチ・イクライッテモダメダネフスキイ国連理事長をはじめ、ちょっとずつ出てくる「大泥棒ブンになにかを盗まれた人」たち。ブンの巻き起こす事件がおかしい。アンパンのへそを盗んでカエルの腹にくっつける、ざぁます奥様から虚栄心を盗む、しまいには人びとが抱いていた常識まで思わぬ方法で盗んでしまう。

おもしろくてやがておかしい(あれ?)、いやいやちゃんと考えどころもある、日本ナンセンス文学の大傑作である。これが小説としては処女作だなんて、井上先生も大変だ :p)

制作日
1989-02-03
画材
Gペン、Photoshop6.0
掲載物
個人誌

book data

作者 / アーティスト
井上ひさし
題名 / 収録物
「ブンとフン」 新潮文庫 (amazon.co.jpで ISBN:4101168016を見る

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