Aiko16歳、普通の女子高生。
よくある話なのだと彼女は言う。母は不治の病に罹り、父の運営する製薬会社の病棟に隔離されていて会えないが、そんなのよくあることだ。姉の態度からするとどうも自分は父の実の娘ではないらしいと感じているが、同じ年頃のみんなが一度は感じること。よく誘拐されかけるのは家がちょっと裕福だから。高嶺藍湖、普通の女子高2年生。勉強よりも毎朝電車で見かけるかっこいい男の子が気になるし、お気に入りのブランドの服がバーゲンで手に入るかどうかも懸念の的。
しかしさすがの藍湖さんも、本当に誘拐されてようやく変だと思いはじめた。とてつもない重装備の誘拐犯たちは身代金を請求するでもなく、彼女が猛獣であるかのような対応をするのだ。ほとんど人間扱いしてもらえないなか、金髪の青年だけが流暢な日本語で口をきいてくれた。なんでも彼女の母と本当の父は、とても貴重な遺伝形質を持っていて、製薬や遺伝子ビジネスの会社から引く手あまたなのだとか。彼女の母はすでに日本の某製薬会社が厳重に隔離していて手が出せないのだとか。君らはものすごい怪力だから近寄っちゃいけないんだってさあっはっはぁ、と笑ういいかげんそうな男を、しかし藍湖さんは信じたのである。乙女の勘は告げていた。この自分より10ぐらい年上に見える男こそ、本当の父だという人の息子、つまり腹違いのお兄様に違いない、と。これから実験動物として輸送される生き物のために、ほかのだれがシャワータイムのプライバシーの必要を代弁してくれるだろうか。洗面セットを差し入れてくれるだろうか。
その勘が当たっていたかどうかはともかく、職務への忠実さにも問題のある金髪青年は、彼女の逃亡を気軽に手助けしてくれた。あまつさえ、内緒だけど次に誘拐しろって言われてるのはこの人たちだよと、とある探偵事務所の住所を教えてくれた。…とても助かったけどもクビになるんじゃないかなぁ、と“お兄様”の身を心配する普通少女藍湖さんなのだった。
今のところ藍湖さんはその探偵事務所の事務員兼住み込み家政婦をやっている。スーツにネクタイで働く身長150センチの女性所長に、その双子の兄でいつも和服の長髪美青年、山奥から出てきて通信制高校で学びつつ道路工事に怪力を発揮する少年などが同居人である。いつかみんなの手を借りて母を助け出したいと願いつつも、やっぱり毎朝元気にごはんをおかわりするかわいい男の子や、特売の白菜が売り切れていないかどうかも気になる、普通で平凡な毎日なのであった。
例の金髪青年がいったい藍湖さんの何だったのか、彼女の母は無事救出されるのか、それはとてもとても長いおはなしなので、またいつかどこかで。
- 制作日
- 2002-06-30
- 画材
- Gペン、PainterClassic1.0、Photoshop6.0
character data
- 名前
- 高嶺藍湖 / Takane Aiko
- シリーズ
- Bloody Hounds
このページの記事はここまでです。U このページの最初へ