不思議なリアリティ。

いそげ! 死の国の叛乱のときはせまっている…。ある雨の日から始まった一郎やルミの大冒険。彼らはぶじに「光車」を見つけて、死の国の王に勝てるだろうか? 心おどる本格ファンタジー。
天沢退二郎氏は肩書きが多い。童話作家で、詩人で、翻訳家で、宮澤賢治と中島みゆき(!)研究の第一人者で、なおかつフランス文学研究者としても高名で、明治大学で教鞭を取っている。初めて氏の著作に触れたのは、小学校の低学年のとき、図書館で読んだ連作短編童話集「闇の中のオレンジ」だった。詩人の豊か過ぎるイマジネーションの力強い連打と強固な世界観に、読了後しばし夢覚めやらぬ心地でぼんやりしてしまったものだ。「闇の中の…」は難しい。オトナになってから読み返して、あんなガキんちょのときにこれが大好きだったなんてちょっとやな子どもだナ、と思った。すでにあのとき、自ら物語を作ることを考えていたのかどうか、思い出せない。
氏の作品をちょっと読んでみようかな、という向きには、こちらの「光車よ、まわれ!」をとりあえず勧めておこう。なんといっても入手しやすい。氏の多くの作品が絶版に近い状態で、古本屋でも高値で取引されているのだが、こちらは文庫版があるおかげで比較的入手しやすいのだ。カバーの紹介文のとおり、奇妙な現象が子ども達を襲う現実世界で、勇敢な少年少女が悪意あるものたちと闘う物語である。本格といっても魔法や妖精がふわふわ遊ぶ甘い世界を想像してはいけない。不思議なリアリティに、夢の中では夢こそが現実なのだと思い知る。
イラストは、主人公側キャラクター勢ぞろい。中央が不思議な力と物語のカギを持つ龍子、右からチャーミングなトミーこと富雄、大柄でせっかちな雄ちゃん、小さいけど勇敢なルミ、しっかり者の一郎、足の速いサッちゃん。
2004年4月、「光車よ、まわれ!」、「夢でない夢」などの復刊が決定した。詳しくは復刊ドットコム - 『天沢退二郎』 復刊特集ページを参照。
- 制作日
- 2001-06-24
- 画材
- Gペン
少年少女大冒険活劇譚。

この作品を漫画にしてもらうなら誰だろう、と思って、まずは自分で描いてみたりした。…少女漫画の作家さんが向いてるかもと思った。
- 制作日
- 1988-02-01
- 画材
- Gペン
book data
- 作者 / アーティスト
- 天沢退二郎
- 題名 / 収録物
- 「光車よ、まわれ!」 ブッキング (amazon.co.jpで ISBN:4835441303を見る)
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