しあわせそうだなぁ。うんうん。

できることなら、作者名を知らずにいきなり読みたかった。だってぜんぜん所謂“宮澤賢治”じゃない。でもなぜか好ましい、不思議な小品。
若い夫婦の嘉吉とおみちは、盆の十六日、穏やかに この一年に二日しかない恐らくは太陽からも許されさうな休みの日
を過ごしていた。そこへ都会のことばを話す若い地質研究者が訪ねてきて、道など聞いて去ってゆく。そのあとおみちがぼうっとしているのが嘉吉は面白くない。「何でぁ、あたな人形こさ奴さぁすぐにほれやがて」
といさかうが、泣きたいのをこらえているおみちがたまらずかわいそうになって、すぐに冗談にまぎれさせて仲直りしたのだった。
どうということもない夫婦の小さな事件を、言葉を選んで、細密な心理描写で描いて微笑ましい。嘉吉とおみち、しあわせそうだなぁ。うんうん。
- 制作日
- 1991
- 画材
- Gペン
book data
- 作者 / アーティスト
- 宮澤賢治
- 題名 / 収録物
- 「宮澤賢治全集 8」 ちくま文庫 (amazon.co.jpで ISBN:4480020098を見る)
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